まぶログ

脱サラ、移住、起業、地域活性化、まぶログのリアルな体験記

新型コロナ禍でも黒字を実現した飲食店の挑戦②

第2回目は「最速で新しい事業を立ち上げた」

 

コロナの影響が出始めたのは4月からでした。

実際3月末の3連休はGW並に忙しかったです。

おそらくコロナのリスクを避けるため、春休みの遠出が難しくなり
近場の観光地として、糸島が選ばれたのではないかと思います。

しかし「コロナバブル」も束の間、4月になって福岡でも感染が拡大し
政府による緊急事態宣言が発表されると、事態は急速に悪化しました。

ご承知の通りほんの一日前まで普通に出来ていたことが、出来なくなりました。

飲食営業に関して言えば
縮小して営業するのか、どんな感染予防対策をするのか、
スタッフのシフトはどうするのか、自粛するのか、
常に判断を迫られる状況。

お店を開けている間は、お客様にお越し頂いておりました。

売上げはいつもの半分くらいでしたが、開けないよりはマシです。

そもそも志摩の海鮮丼屋に関して言えば、自粛対象の夜の営業でもありませんし
実際、他の飲食店(特にチェーン店系)が人で溢れているのを見る度に
自分達はどうすべきなのか、本当に悩みました。

「飲食店は生活に必要なインフラ」と言ってくれる仲間も居れば
SNSを中心に「飲食店は自粛すべきだ」という声も溢れておりました。

あのとき、何が正解だなんて誰も分からなかったと思います。

であれば「黙る」という選択肢もあったのではないでしょうか。

無責任な言葉・情報に、人知れず、どれだけの人が悩み、傷つけられたか。

私は仲間の飲食店と顔を合わせる度に、その痛々しい傷口を見ていました。

しかし人を変えることは出来ません。であれば少なくとも
我々地魚BANKは不安や恐怖を煽るのではなく、勇気と喜びを広げたいと思いました。

この頃、様々な飲食店で「テイクアウト」が始まっていました。

店舗営業が出来なくなった以上、非接触型の商売として
藁をもすがる想いだったと思います。

 「エール飯」など、消費者の間でも支えようとする動きが始まりそれは今も続いています。

私達も始めようかと思いましたが、海鮮丼のテイクアウト・・・

お寿司ならまだしも、鮮度の良い地魚は一度切ってしまえば
時間が経つと水分が出てしまい、食感も変わります。

どうしてもいつもの味をお届けする自信が無かったですし
基本的には生を扱っていますので食中毒のリスクも高くなります。

 それに「エール飯」も次第に応援というより
「何処の店がお得か」という論調に変わったように思います。

 それは仕方の無いことだと思います。みんなが苦しいんです。

であれば他の飲食店とシェアを奪いあっても仕方が無いと思い、
テイクアウトは辞めようと決めました。

 それでも

 「テイクアウトみたいのされないんですか?」

 と会員様からの問合せが相次ぎました。

我々を応援して下さろうというお気持ちがヒシヒシと伝わりました。
本当に有難く、嬉しいことでした。

 この時ほど地魚BANKをやって良かったと思えたことはありません。

 一方で

「自宅で美味しい魚を手軽に食べたい」

 という確かなニーズも感じることができました。

そこで
①会員様(≒ある程度魚料理が出来るor興味がある)が喜んで下さる商品。
②コロナが収束した後も新しい事業の柱として続けられる商品
③他の飲食店と被らない商品。

というコンセプトの「地魚BOX」が誕生しました。

決断してからは早かったです。

全スタッフを集め、

「全店の営業停止の決定」「全員の雇用の継続」「地魚BOXへの挑戦」を伝えました。

さらには「今日が第二の創立記念日です」と宣言しました。

会員様から「テイクアウト的なサービス」のご要望があったのが4/3(金)
それから準備をして最初の販売が4/10(金)でしたので、
ちょうど一週間で新しい事業を開始しました。

少し格好を付けてビジネス的に言うと

・スピードは最大の付加価値
・会員制サービスによる迅速な顧客ニーズの把握
ブルーオーシャンを選んだ

 等、色んな捉え方が出来るかもしれません。

ただそもそも地魚BOXの前身となるような取り組みは既に実施済みでした。

そのときは郵送料の高騰(人出不足)や梱包の手間、

「価値は産地にあり」

とのポリシーの下、糸島に来て、糸島で地魚の魅力を味わって頂く商売に
集中しようと一旦断念しました。

しかしコロナ禍のような「背に腹は代えられない」危機的状況は
あらゆるメンタルブロックを外してくれます。

そしてスピード感を持って新しい仕事を始めるのはメチャクチャ楽しい!

元々志摩の海鮮丼屋も、わずか1ヶ月でオープンさせたお店。駅前のバルもそう。

時間が無いと「本当に売れるんかいな・・・」とか
ネガティブな感情になっている暇すらありません。

しかしトラブルはたくさん起きました。

商品を入れ忘れて次の日にもう一度宅配したり配達指定日を間違えたり、
誕生日に間に合わなかったり・・・ご迷惑もたくさんかけてしまいました。

それでもミスが起きる度にスタッフには

 「新しいことに取り組んでいる証拠です。思い切ってやって下さい。責任は僕がとります」

と言いました。言ったからには責任を取ります。

雨の中、再配達、ビルの上層階に駆け上がったり
こちらのミスで大切な食事に間に合わなかったお客様に謝罪の電話をしたり、
お代を頂かないこともありました。

それでも自分達にとって大きな喜びは

 「この状況下でも、もとめられる仕事が出来る」

 ということでした。

仕事ってお金を稼ぐのも当然大事ですが
誰かに喜んでもらえるかどうかが一番大事だと思います。

少し哲学的な話をすれば

 「人はパンのみに生くるにあらず」とはイエス・キリスト

 「魂とは肉体を拒絶するなにものかである」とは哲学者アラン。

もちろん肉体的にはコロナは怖いけど、
それでも自分達には「誰かのために出来る仕事」がある。

なんて仕合わせなのだろう。

会員様からは

「いつも前向きな姿勢に元気をもらいました」

同業者の中には

「色々大変なのに、何も言わずに、ただ前を向いて挑戦してる姿を見てたら涙が出てくる」

とまで言ってくれる方もいました。

自分達の挑戦が、生き様が、他の誰かが生きる支えになる。

もしかすると今までの人生で一番、「人間」として生きていることを
実感しているかもしれません。

しかし、コロナはそんなに甘くはありませんでした。

怖れていたことが起きてしまいました。

十分に気を付けていたはずなのに。

よりによって既往症のあるスタッフが体調を崩してしまいました。