まぶログ

脱サラ、移住、起業、地域活性化、まぶログのリアルな体験記

新型コロナ禍でも黒字を実現した飲食店の挑戦③

第3回目は「投資した」

飲食店は完全にリモートで出来る仕事ではありません。

もちろん
テイクアウトやドライブスルー方式にシフトすることで
接触割合を減らすことは出来ますが
料理を作るためには厨房に行かないといけませんし
食材を仕入れるためにはお店に行かないといけません。

飲食事業をしてる間は出来るだけ体力のあるスタッフや私が
接客をするようにしていました。

多少なりとも「命の選択」をしている自分に戸惑いました。

既往症のあるスタッフは仕込みだけの出勤に切り替えるなど
少しでも感染リスクを抑えようとしました。

程なくして全店の飲食営業を停止しました。

そのスタッフ以外だって
離島から通勤しているスタッフもいれば
家族にお年寄りやガン患者を抱えるスタッフもいます。

私の家にも小さな子供が居ます。

誰しもが、少なくない不安を抱えています。

一方で「安全」と「安心」は別ものであることも忘れてはなりません。

安全とは科学的に裏付けられたもの。
安心とは精神的なもの。

そもそも直売所という人がたくさん訪れる空間にある職場です。

いくら飲食営業を停止して地魚BOXの販売のみに切り替えても
感染リスクはゼロにはなりません。

つまり飲食営業停止は科学的には安全とは言えないものの
精神的な安全を選んだだけに過ぎません。

現在のコロナ対策はこの双方がごちゃ混ぜになっているように思います。

本当にそれで安全なの?と思えるようなことでも
安心のために「仕方無くやる」「みんながやっているからやる」
という常識が蔓延してしまい、もう、どうしようもありません。

結論から言うと、既往症のあるスタッフはコロナではありませんでした。

飲食店営業を停止してから1週間後の発症、
幸か不幸か、違うウイルスに感染していました。

ウイルスはその性質上、
同時に2種類のものに感染することはありません。

コロナ的には安全であることが分かり、一安心するのも束の間、
健常者なら2、3日で治る病気でも
結果的に一週間丸々休むことになりました。

その間の給料は当然払うことになります。
ただそれはコロナ前からそうでした。


感染リスクを減らすためには休ませたい
給料を払うためには商売を続けないといけない。

 
多くの人がこの二つの思いの狭間で今もなお、揺れ動いていると思います。


どうせ誰も正解が分からないのなら
政府の指示や行政の指示、無責任な誰かの意見ではなく、
自分達で決めようと思いました。

営業自粛後、再開に向けて
スタッフのご家族向けにこんなメッセージを送りました。

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 (株)いとしのいとしまスタッフご家族様へ

 平素よりお世話になっております。株式会社いとしのいとしま代表取締役馬淵崇です。

スタッフの皆様におかれましては、日頃より弊社事業に多大なるご貢献を頂き誠に有難うございます。今般の新型コロナウィルス感染拡大に伴い、弊社におきましては

・志摩の海鮮丼屋:4/14~5/6

・駅前のバル:4/9~当面の間

飲食営業の自粛を決めております。

しかしながら食品を扱う事業柄、在宅勤務が難しく、一部スタッフには出勤をお願いしており、この間もリスクがゼロだった訳ではございません。

スタッフ自身はもちろん、ご家族の皆様にも不安を与えておりますこと、またご連絡が遅くなったことをお詫び申し上げます。

ご承知かとは思いますが、当初5/6が期限であった緊急事態宣言は延長される見込みでございます。福岡県での感染者数は減少傾向と発表されておりますが、今後も引き続き感染リスクがゼロになることは考えづらいでしょう。

弊社としましては、出来る限りの安全対策(注文口、返却口にビニールシートの設置、来店者のアルコール消毒の徹底等)と、人員体制を増員することで身体負担軽減による健康管理、感染リスクの低減等を行った上で、今後の営業につきましては以下の通り、考えております。

・志摩の海鮮丼屋:5/7より営業再開

・駅前のバル:当面の間休業

さりながら、情勢はめまぐるしく変わります。皆様の大切なご家族の命を預かる者として、出来る限りの安全を確保出来るよう、臨機応変に対応して参ります。

上記方針を踏まえ、今後の勤務につきましては、一人一人のご事情に合わせて決めて参ります。本来ならば、直接会ってお話しすべきことですが、この状況下ですので別の手段で個別に連絡させて頂きます。現スタッフ全員を雇い止めすることなく、今後も引き続き雇用出来るよう、長期的な視点の下、全力を尽くして参りますので、ご理解の程何卒宜しくお願い申し上げます。

また、不謹慎に思われるかもしれませんが、この新型コロナウィルスは弊社にとっては大きなチャンスでございます。正に第二の創業だと思っております。

「うまい魚をこれからもずっと」食べられる社会を目指す中で「地域で100年後も喜ばれる商売」を実現するべく、今後もスタッフ全員の力が必要です。

何より、この状況下においても、お客様はもちろん漁師、農家、地域から「必要とされる仕事」に日々向き合っているということだけは、ご理解下さいますよう、会社を代表してお願い申し上げます。

令和2年5月4日        
株式会社 いとしのいとしま
代表取締役 馬淵 崇 

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覚悟は決まりました。

しかし何とか自粛期間中のマイナスを取り戻そうと反転攻勢に出ようにも、
営業自体がままらない状態。

それならばと考えたのが「投資」

投資先は大きく分けて三つ。

 一つめは人、スタッフです。

この状況下、少しでも人件費を抑えたいところですが
今安易に給料を下げてしまえば士気が下がります。

苦しいのは会社だけではありません。スタッフだって生活があります。

また弊社のような小さな会社の最大の資産は人だと思っています。

給料を労働の対価と考えると、労働がままならないと、低くしようと思ってしまいます。
一方で「一番手堅い投資先」という側面もあると思います。

社員の給料はそのまま維持。出勤時間が減っていたパートの皆さんには少しですがお見舞い金もお支払いしました。

また4月1日の時点で、仮入社していたスタッフも
5月1日付けで正社員として雇用契約を結びました。

飲食経験は全くありませんでしたが、
弊社に入社するまでは宿泊事業に携わっており、
海外経験も豊富で英語もペラペラ。

ニュージーランドの大会で柔道チャンピオンになった経験もあり
就業条件で真っ先に「体を動かす仕事が良いです」と言う
バリバリの体育会系。

コロナの影響で勤めていた宿泊事業会社が倒産したという
不可抗力ではあるものの、

昨年より地魚ツーリズム推進協議会として
インバウンド向けの宿泊事業への展開を模索している中、
願ってもみない人材でした。

本当は2ヶ月ほど前職の給料を保証した上で
今後についてはゆっくり考えるという緊急措置的な雇用でしたが
真摯に仕事に取り組む彼の未来に投資したいと思い、
1ヶ月前倒しで正社員採用を決めました。

偶然にも私の大学の後輩でした。学部、学科まで同じ。

このスタッフへの投資は、後に様々なご縁や奇跡を巻き起こすのですが
それはまたの機会に話すとして、他のスタッフへの影響も大きかったと思います。

今後の経営に不安をもたれてもおかしくない中、
会社として新規採用という「攻めのメッセージ」を出したことは
とても多くのポジティブな効果をもたらしたと思います。

 

二つ目の投資先は・・・
(つづく)