まぶログ

脱サラ、移住、起業、地域活性化、まぶログのリアルな体験記

新型コロナ禍でも黒字を実現した飲食店の挑戦⑤

第5回目は「武器を増やした」

そういうと少し仰々しく聞こえるかもしれませんが
簡単に言うと「できることを増やした」ということです。

どうせお店を開けることが出来ないのなら
お客さんが減って暇になるのなら、
その間で少しでもレベルアップしよう。

そう思ったのは、私達だけでは無いと思います。

今までやりたいと思って
中々挑戦できていなかったことに取り組みました。

一つは「寿司修行」

もちろん私自身も修行しているのですが
もう一人「投資した」で紹介した新入社員U君も
調理経験がほとんど無い中、寿司修行にも連れて行っています。

魚も満足に捌けなかった彼に
あえて用意した寿司修行という舞台。

本来ならば無謀なことかもしれませんが、彼を抜擢したのは
法隆寺最後の宮大工、西岡常一さんの著書
「木のいのち木のこころ」の内容を覚えていたからです。

 「若い子にはひとまず大きな仕事をさせろ」

正確な表現やその理由は忘れましたが、
若いうちあ出来るだけ大きな仕事をさせると
とにかく「伸びしろ」が一番大きいので
他の細かい基礎的な技術にも楽しく向き合うことが出来る
と、私なりには理解していました。

当然失敗も物凄いです笑。

寿司を教えてくださる師匠にはお付き合い頂き申し訳ないのですが
彼の真っすぐに取り組む姿勢に「初心を思い出させてもらっている」と
言って下さいます。本当に有難いことです。

もちろん、誰しもがこのいわば劇薬を飲ませるようなことに
耐えられるわけでは無いと思います。

普通に考えれば無茶苦茶ですし、今の時代はパワハラにもなるのでしょうか?

彼とはきちんとディスカッションして、前向きに戦えると判断したからこそ、
寿司修行に連れて行くことにしました。

実際に、彼の成長は目覚ましいです。僕もおちおちしていられません。

他のスタッフもそれに刺激を受けて、仕事に取り組んでくれていると思います。

武器を得る過程でまた武器を得る。

本当に楽しく取り組ませて頂いております。

 

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もう一つの武器は「糸島ブイヤベース」

駅前のバルや地魚ツーリズムの柱となるような
新しい名物料理として「糸島ブイヤベース」を開発中です。

と言ってもこれは自ら仕掛けた訳ではございません。

さかのぼること3カ月前。

福岡にもコロナの脅威が押し寄せ始めた3月31日。

ホテルニューオータニのシェフで
博多ブイヤベースの会を主宰している山口シェフから

約5年ぶりにメッセージが届きました。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

最近立ち上げられました、地魚BANK、良く理解はしてませんが、
ワクワクする取り組みだなー、と感じています。その中で

「未利用魚の商品化にも挑戦します。」

との一節が目につき、メールしています。

糸島では、普通は売り物にならない、雑魚と呼ばれる小魚たち、安く安定して入るものなんでしようか?網にかかった、ベラやらなんやらのトロ箱ででよくたたき売られている小型の雑魚たち。(中略)

私の特別な料理で、ブイアベースがあります、これは通常の作り方と違い、「本場マルセイユ憲章にのっとった作り方の物」。日本でもこのスタイルで作れる人は、私の弟子を含めて何十人もいない?福岡では3人くらい?かと思います。

これまで博多福岡の新しい郷土料理にしよう!と、博多ブイアベース、としてご紹介してきました。

これは消してはいけないレシピ、福岡の食文化に貢献出来る料理。

最高に美味しいブイアベースなんですが、(中略)市内の魚屋さんでは、中々雑魚は手に入らない。しかしブイアベースの火を消したくない!残したい!

とは言え、昨今の状況でこれからどうなるのかわかりませんが、このレシピはなんとか残したい、と言う思いです。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

To山口シェフ

大変ご無沙汰しております。 

結論から言えば小型の雑魚は入荷しております。安定的かと言われれば、禁漁期間や時化等で入荷が無い場合もございますが、直売所には今日も小アジ、メバルアラカブ等入荷しておりました。また5月からエビ漕ぎ漁という小型の底引き網漁が解禁されるのですが、この漁にはエビはもちろん小型のイカやたくさんの小魚が入ります。

ただ当方の目指すところはこれらの「安くなりがちな」地魚の価値を高めることで漁業を持続的に支えようとするものです。

できるだけ仕入れ値を高くする代わりに極上の地魚物語を伝え、付加価値をつける挑戦をしておりますので「安く」にどこまでお応え出来るかは分かりません。

(中略)そこでご提案なのですが是非一度「糸島ブイヤベース」を作って頂けないでしょうか。

例えば材料費は地魚BANKが負担、直売所でシェフと私で仕入れ地魚BANKの加工場「地魚ラボ」もしくは「駅前のバル」にて山口シェフに調理して頂き、主に地魚BANKの会員様を対象に糸島ブイヤベースを味わうイベントを開催する。

(中略)昨今の状況、非常に厳しいものがありますがグローバルからローカルに目を向けざるを得ないチャンスと思っております。昨年末、スペインのバスクに視察に行って参りました。オンダリビアの「世界一美味しい魚介のスープ」を食べる予定が、諸般の事情で食べられませんでした。今思えば、山口シェフのスープを食べるための運命だったのかもしれません。 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

なるほど!そう言う考え方がありますか。

いくつかクリアすべきこと、がありますが、賛同致します!

どう言う形にしろ、ブイアベースが伝えられるなら、感謝です。

(中略)

博多ブイアベースとはいえ、実際の素材は野菜も含め糸島ではないか?と思います(笑)

日本で一般的なブイアベースは、タイなどのアラを炊いてクリアなスープをとるのですが、私のは、雑魚をウロコも内臓も付いたまま、炒めて、野菜と煮込んで、ミキサーにかけます。海の旨味が詰まった海の豚骨スープのようなスープを取ります。つまり、四季折々、取れる魚、食べてるエサなどにより、味が変わります。

そのスープに、別に焼いたり煮たりした魚介類をそえ、野菜をそえます。そして締めは気取らず、おじや、が最高です。

(中略)

 まずは糸島へ視察を兼ねて伺います。

 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

このようにして始まった糸島ブイヤベース。

「世界でこのときこの場所でしか飲めないスープ」

期せずして、素晴らしい武器を手に入れることが出来ました。

この武器を活かすも殺すも、今後の我々次第。

今年は宿泊事業にもチャレンジします。

新型コロナ禍でも黒字を実現した飲食店の挑戦⑥

最終回は「夢を売った」

 (つづく)

 ※写真は糸島ブイヤベース。
糸島地魚ツーリズムの一つの目玉として育てたいと思っています。

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